還暦ダイアリー

いつの間にか還暦に。されどまだ還暦、人生カウントダウン始まらず

日記【生成AI超初心者の習作ギャラリーその3:楽譜の表紙 (マーラーの合唱譜) 】

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楽譜を製本しました。その経緯

昨年から合唱活動をン十年ぶりに再開してまして、現在2つの合唱団を兼団してます。そもそも、仕事副業その他で忙しいのになぜ合唱を再開したのかは、本投稿の主旨と乖離するのと長くなるのでここには書きません。

合唱をやっていると、アレコレと歌いたい曲がでてきます。あのレクイエムに、この受難曲など沢山ありますが、全てを叶えるのはもちろん無理。

それでも齢を重ねる前に是非(再び)歌っておきたい曲があって、それがマーラー交響曲第8番『千人の交響曲』です。既に現在も千人の交響曲を歌う合唱団員の公募をかけている団体があるので、割と現実的に数年以内に歌う機会はあろうと考えています。

この曲は40年くらい前から計3つの公演で歌ったことがあり、それぞれの公演にいろんな思い出があります。

東京都交響楽団さんから拝借

これは一番最初に歌った1985年の東京都交響楽団の創立20周年記念公演の写真。指揮はズデニェク・コシュラーさん。登壇人数は合計1008名だそうで。自分もこのどこかにいます。

余談ですが、この翌年にサントリーホールのオープニングシリーズで千人を振った若杉弘先生が聴きに来ていて、東京文化会館の楽屋フロアのトイレで偶然、連れ○○ンになったことが良い思い出です。あと、この日の模様は一部、TBSのマーラーを特集したドキュメンタリー番組で使われました。

この都響公演を含めて計3公演も千人を歌ったので、ずっと完璧に歌えるつもりでいたわけですが、そう思っていた割に、口ずさんでみようとすると一部が不明瞭で歌えません。こりゃいけないと、保管してあったはずの楽譜(合唱譜:ボーカルスコア)を探します。

しかし、見つからない。

おかしい。他にも、バッハのマタイ受難曲ロ短調ミサやヘンデルメサイアなど、たくさんの書き込みがある貴重な楽譜たちが見つかりません・・。何故か薄い第九の楽譜だけがバラバラと出てくる。

引っ越しの際に誤って捨てたのか?

探す労力も惜しいので (めんどくさい)、通販で買うことにします。

そして、アマゾンで検索・・・5000円!こりゃあ高いぞと、今度はAmazon.com(米国)で検索すると、同じ楽譜が約20ドルで安そうに見る。でも日本へのスタンダード送料は8ドルくらい加算されるので合計で28ドル、ドル円154円で計算すると4312円・・。まだ高いです。

という経緯があって既製品の購入をやめました。既にパブリックドメインとなったヨーゼフ・ヴェスによるピアノ合唱譜のPDFをIMSLPサイトからダウンロードして、適当にデザインした表紙を付けて自分で製本に出したのです。

出来上がった楽譜

表紙のデキは置いといて、楽譜としては悪くありません。

ちょっと高級な書籍用の用紙でオーダーしたので、そこらの楽譜より見やすく印字もクッキリ、めくりの音も小さくて、さらに多少軽くできています。計214頁、1部だけのオーダーでも2200円台でした。そこそこヤスー。

 

どうでしょう、表紙はともかく楽譜としては立派です。

表紙のマーラーカリカチュアは、1951年に亡くなったOscar Garvensによるもので、改正著作権法が定義する没後70年は越えてるからオ-プンですよね・・?いずれにしろ今のところは商用利用はしてません。

表紙が気に入らない。そこで・・

しかし・・。悪い習性です。急いで表紙をこしらえましたが、それなりに納得して製本会社へ出稿したはずなのに、見れば見るほど表紙が気に入らなくなってくる。もっと時間をかければよかったと反省。

なので、楽譜に5000円使ったことにして、もう一部オーダーすることに決定。今度は表紙を生成AIを用いて描くことにしました。はい、当初の楽譜を安く調達するという目的は意図的に忘れています。

① 生成AIで直接表紙全体を描画してみた

まず、ツールはimageFXを用います。この選択は無料であること。及びweb経由で処理が早いこと、そして何より、いつも使っているstable diffusionでは文字を扱えないことが理由です。

一度に最大4枚を生成するimageFXにプロンプトを入力してSheet music cover (楽譜表紙)としてGUSTAV MAHLER、SYMPHONY No8などの文字情報を与え、さらにArt NouveauとかFin de siècle art (世紀末美術)など描画スタイルも指定。

結露から先に書きます。合計で数百枚を描画しましたが全て気に入らなかった。

いずれもがAI臭く、何より文字の扱いが適当すぎる。下の表紙は『SYMPHONY』であるところを『SYMPHON』、2つ目のブルーの表紙は、デザイン優先で『SYMPHONY』の文字がおかしいほか、『No.8』が『No.88』になっていたり。

とにかく気に入らない。

 

 

② テーマ画像を追加。『永遠にして女性的なるもの』

ここまでは文字情報だけで表紙を描画していたプロンプトに、テーマを与えた画像の描画指示を追加します。

マーラーの第8交響曲は、よく知られるように第二部のテキストにゲーテの『ファウスト』終幕の場『神秘の合唱』を用いています。

余談ですが、西洋芸術のモチーフとして様々に扱われているファウストを、教養として得るため大昔に読みました。そもそも戯曲なので読みにくい上に、第一部はまだ面白くて良いのですが、正直、第二部は難解。読み終えたけどとても疲れた記憶。根本的に理解できてないので、いずれ読み返そうと考えてるうちに長い年月を経てしまい、未だ果たせず。

さて、『神秘の合唱』を採用した第二部 (交響曲の)では、主人公のファウストの魂が、獅子がたむろす暗い谷底の描写から、やがて天使たちに囲まれ、komm! komm!(来なさい)の声に呼応しつつ、コーダにて永遠にして女性的なるもの、に率いられ、天界が爆発的に共鳴する中を上昇してゆくという立体構造で構築されおり、最後は『永遠にして女性的なるもの、我らを率いて昇らしむ (Das Ewig-Weibliche Zieht uns hinan)』という詞で締められます。

この、永遠にして女性的なるもの(Das ewig weibliche)は何を比喩しているのか、という議論があるようですが、自分は間違いなく聖母マリアを差していると考えます。

その根拠として、女性的なるもの(weibliche)の冠詞が女性冠詞のDieではなく、中性冠詞のDasであることから、いわゆる処女であることを示していると推測。

いや、そんな能書きはどうでもよいですね。ともかく、聖母マリア様をモチーフにした表紙にしようと、プロンプトに『Virgin Mary』を入力しました。

 

 

 

うーん、いずれもAI臭い・・。マリア様をモチーフにしてから百枚以上を描画しても、やはり気に入った一枚を見出すことはできません。途中でゲーテのテキスト同様に天使たちが舞っている様子を追加指示したら、数人でいいのにたくさん舞い過ぎてる。

ならば、と表紙すべてをAIに任せているからAI臭さが漂うのだと考え、途中から素材としての聖母マリア様の描画へ変更。

 

表情がまるでスターバト・マーテル(悲しみの聖母)

 

 

最後のほうで石膏のマリア像も描画してみた。ローブを青く着色していることには感心。これを素材にすれば、いい楽譜カバーをデザインできそうに思えるけど、ミサ曲ならともかく、千人の交響曲の楽譜としてはイメージが合いません。

そして、ここまで来て考えを改めました。それは信者でもない自分が軽率にマリア様を素材に使うのは不遜ではないかと気が付いたから。なのでマリア様を使うことは諦めました。

③ グレートヒェン (グレッチェン)

ファウストに登場する女性といえば、恋人であり、嬰児をあやめた罪により処刑されたグレートヒェン(マルガレーテ)を忘れてはなりません。彼女をモチーフとすることにして路線変更。

まず、有名な『糸を紡ぐグレートヒェン』をプロンプトに用いて描画すると、なかなか美麗な絵が描画されます。以下に2サンプル。

 

 

しかし、残念ながらいくら絵が美麗でも、これでは大宇宙が爆発的に共鳴する曲のイメージと合致しません。

そこで、先の『永遠にして女性的なるもの』の議論に、グレートヒェンこそがモデルであったという仮説を立てました。実はゲーテは恋多き男であったということでもあり、ファウストを天界に引き上げるEwig Weiblicheはグレートヒェン、というか普通の女性をイメージした可能性もあるようにも思えるから。

少々プロンプトを工夫した上で、天界にてファウストを待つ普通の女性(という言い方も変ですが)を描画。主にバロック絵画スタイルを指定。

割と良い絵が出力されます。しかし、下の2枚の画像のように、自分のプロンプト技術が足りないせいで、グレートヒェン自らが上昇している感が出てしまうなど、納得の一枚にはまだ遠い。

 

 

この後もグレートヒェンの描画も何百枚か試した。

最終的に、その中でようやく天上でファウストを待ち受けるイメージに近くなったのが下の一枚。しかし・・。

 

 

顔の描写が雑なんです。焦点が合わない小さい黒目、歪んだ鼻。そしてどの描画でも必ず強調されていたnipple。いくらNever draw nipplesとプロンプトに記述しても無視される。

でも全体の雰囲気の良さは捨て難いので、この描画を採用。顔とnipplesはツールClipStudioを用いて手書き修正しました。下記参照。

 

 

④ 題字

次は題字です。『GUSTAV MAHLER』、そして『SYMPHONY No.8』と『VOCAL SCORE』の装飾印字をAIに描いてもらった。以下にサンプル。

 

なかなか器用に描いてくれてます。表紙として題字とモチーフ絵を一緒に描画させるとAI臭くてかなわんと感じていたことが、それぞれを個別に描画させると良い傾向に好転。最終的にGUSTAV MAHLERは上のサンプルの最後の描画を採用しました。

表紙が完成

以上、グレートヒェンの素材絵や題字を統合してデザインしたのが下記の表紙。ここまでえらく時間がかかりました。総じて満点とは書けませんが及第点のデキ。

ツールは無償のベクタードローツール (アドビのイラストレータのような)であるinkscapeを使用。inkscapeと称する前から20年以上に渡って使い続けているので、最高に手に馴染んでいるツール。

 

 

下部の緑塗り潰しは、画像としてのアクセントに加えたものですが、仮にこの楽譜を売るなど商業展開する下心を考慮して商標を描き込んでいます。

手数料とデザイン料を載せて¥3000なら売れるかな?製本会社が代理発送するので送料は無料です。納期はオーダーから実働7~8営業日で発送。もちろん1冊からOK。場合によってはメルカリに出すかもしれません。

現在製本オーダー中。出来上がったら写真を追記します。

以上

-------- 以下、12/24 追記 --------

追記:2回目の製本が上がってきました。

マーラー交響曲第8番合唱譜、A4、全216頁、表紙はPP加工 (マット)

恐らく、世界初の生成AI素材を用いた楽譜・・かな? (中身はヨーゼフ・ヴェスによるヴォーカルスコアと同じ)

 

背表紙にタイトルを入れてあります。

 

表面にはPP加工 (マットコート)してあります。耐久性向上。

写真はホワイトバランスでアンバー色に引っ張られて枠が青くなってますが、

いわゆるクールホワイト系の白です。次の改版機会があれば、

もう少し純白寄りのクールホワイトの枠色へ変更予定。

 

目次用に遊びページを入れてあります

 

A4サイズギリギリまで印刷してあるので、多少大きく見えるはず

以上