還暦ダイアリー

いつの間にか還暦に。されどまだ還暦、人生カウントダウン始まらず

本日のお仕事BGM (『月夜の蓮』)

次回の新日本フィル定期演奏会の予習してました。BGMとして、ながら聴きができる曲じゃないので仕事の手は止めて聴いております。

 

細川俊夫:ピアノとオーケストラのための『月夜の蓮』

モーツァルトへのオマージュ~

 

 聴いた演奏は2つ。

 児玉桃(P)、小澤征爾/水戸室内管弦楽団 (2006年)

 児玉桃(P)、準・メルクル/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管 (2013年)

 

児玉桃(P)、小澤征爾/水戸室内管弦楽団。何とECMレーベル

 

児玉桃(P)、準・メルクル/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

 

日本では邦人作曲家の世界的な活躍がなかなか見えてこないのですが、細川俊夫氏は常に新作を渇望されている日本を代表する作曲家です。

この『月夜の蓮』の初演者であり、この曲の献呈を受けた児玉桃さんは、2006年にNDR(北ドイツ放送交響楽団)での初演以降、既に同曲を世界中で20回以上演奏されていることからも、細川音楽の人気ぶりが良く解ります。

もちろん、来月の新日本フィル定演でのピアニストも児玉桃さん。指揮は今や楽壇の重鎮である秋山和慶さんで、秋山さんの公演は外れナシなので期待してます。

 

副題である『モーツァルトへのオマージュ』からも解るように、この曲はモーツァルトのピアノ協奏曲第23番の第2楽章からの引用があります。でも、美しく哀愁を帯びたあのアダージョ楽章の雰囲気はありません。

何と表現すべきか、まず空間音響的な音楽で、静寂と混沌が混じり神秘的ですらあります。

また月夜の蓮、とはあの蓮の花のこと。楽譜には『ためらい』『開花への憧れ』『沈潜/泥の内で』など標題が書きこまれているらしく、泥の中からつぼみをもたげ、月夜の晩にようやく綺麗に開花するような物語があると推測できるのですが、作曲者曰く、

『私の最近の音楽は、いつもある「物語」を隠しています  (中略)  私の音楽は決して、私の「物語」のプログラム音楽ではありません。あくまで音楽そのものを純化された形で  (中略)  したがって聴衆の方には、その物語を理解してくださる必要はないのです。しかしこの「物語」を、漠然と遠くに感じてくださったら・・・』

だそうです。(ネット上で見つかる水戸芸術館の2006年12月機関紙より引用)

物語を知らされないリスナーの身には何か突き放された感があります。

 

モーツァルトの引用は、途中断片的に現れるようですが、はっきり奏されるのは最後の最後、静かに。あのアダージョ楽章の美しさは憧れであり、開花した先にある到達点ではなかったのか?などと考えます。