還暦ダイアリー

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演奏会【佐渡裕/新日本フィルとウエンツ瑛士の『夏の夜の夢』】

昨夜、この演奏会から戻り、仕事のプロジェクトチームのウィークリーレポートを書き上げてメールで送り、寝たのがなんだかんだ午前3時。
本日は10時から東京文化会館での東京音楽コンクール本選のチケット、12時から30年近くに渡って観劇を続けている劇団『ラッパ屋』さんの公演チケット取り、そして午後はN響公演に出かけます。
ただ、10時の東京音楽コンクールのチケット取得後、ラッパ屋の販売開始が12時のはずなのに、試しに購入専用URLを入力してみると、あれよあれよという間にチケットが取れてしまった。いいのだろうか。最前列のかぶりつき席ですよ。
ということで、少し時間ができたのでこの投稿を書き始めていますが、書き終わるのはいつになるのだろう。

新日本フィルハーモニー交響楽団 第655回定期演奏会
2024年4月19日(金) サントリーホール

 指揮:佐渡
 ソプラノ:小林沙羅
 メゾ・ソプラノ:林美智子
 妖精パック:ウエンツ瑛士

 ベートーヴェン交響曲第2番ニ長調作品36
 メンデルスゾーン:劇付随音楽『夏の夜の夢』作品61より

このところすっかり春の陽気になり、電車に乗るために急ぎ足で駅へ向かうと汗ばむくらい。軽装で出かけられるので、冬の間、演奏会会場で重い上着のやり場に困っていた(クロークに預けるのが面倒なので)ことが少しだけ昔に感じられるようになりました。
この日は新日本フィルの2024-25シーズンの初日公演で、会場はサントリーホールでした。会員継続特典のCDは、昨シーズンの定期演奏会を聴いた中で一番の好演だった、佐渡さんによるブルックナー交響曲第四番のライブでした。これはうれしい。
昨シーズンのすみだトリフォニーホールからの席替えで、サントリーホールのPブロック席にしましたが、ここは音のバランスが悪く基本的に良い席ではありません。昨日は児童合唱がよく聴こえませんでしたし、金管の音が大き過ぎたり、オルガンを使う曲などは頭上を音の波が通過して客席に降ってきません。でも、昔から馴染んでいる席ですし、音楽への没入感が高く気に入っているんです。

前半はベートーヴェン交響曲第二番。
いわゆる第三番『英雄』以前の初期交響曲として第一、第二番が括られてますが、この曲は第一番とも違って個性的です。ベルリオーズ曰く、エネルギーに溢れているとか評していたそうですが、その割に第一楽章の序奏からは苦悩を感じます。苦悩から歓喜がテーマである第九交響曲における、苦悩の第一楽章を思い出させる展開があるのも印象的です。しかし、第一主題がヴィオラ、チェロで奏されてからは一転、気分を高揚させてくれるような明るい展開に。
いわゆるハイリゲンシュタットの遺書が書かれた時期でもあり、序盤のナーバス感は難聴が始まった影響を否定することはできないでしょう。

この曲は割と好きなのですが、なかなか演奏の機会に恵まれません。最後に聴いたのは2015年の小澤征爾音楽塾(横須賀芸術劇場)の前半プロで、アルト歌手で指揮者のナタリー・シュトゥッツマンさんの指揮でした。その後半プロがラヴェルの歌劇『子どもと魔法』(こちらは小澤さん指揮)。
昨日の『夏の夜の夢』、そして小澤さんの『子どもと魔法』、どちらのメルヘン曲も前半にベートーヴェンの第二交響曲が置かれています。何か因果関係があるのかどうか少し調べてみたものの解らず。きっと偶然?
この曲の演奏は、ハイドンの流れで古典風にしたり、あるいはピリオド楽器を用いて快活なリズムで演奏するのも趣向があって良いですが、この日の佐渡さんの演奏のように開放的で躍動感を伴った演奏の方が自分は好みです。

後半はメンデルスゾーンの劇伴『夏の夜の夢』。
予定されていたプログラムを見るに、児童合唱含めた声楽陣を揃えてあるのに全曲ではなく抜粋、しかも曲数が少ない、と、やや不満でしたが演奏が始まって納得。ホール内のあちこちに出没する妖精パック役のウェンツさんが主役。そりゃあ曲数が減るのも仕方がない。

この曲を最後に聴いたのは2022年夏のパシフィックフィルハーモニア東京(旧東京ニューシティ管弦楽団)で、指揮は飯森範親さんによる全曲公演。
ゲストコンマス(当時。現在は同楽団の特別主席コンサートマスター)としてライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のヘンリック・ホッホシルトさんが入っていたおかげなのか、緊張感があるドイツ音楽としてのメンデルスゾーンがオペラシティに響いていたことが印象的でした。中井貴惠さんの無駄のない凛とした朗読も良かった。
余談ですが、この日の前半プロでメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を弾いていた髙木凜々子さんが、その後、同楽団の特別ソロコンサートマスターに就任しています。

昨日の佐渡さんの演奏は、妖精パックの一人芝居、演出、照明を含めた趣向のある舞台音楽として、ロマンティックなメルヘン音楽に徹していたのもまた良かったのではないかな。
ただ、ウエンツさんを朗読だけにした全曲演奏でもよかった気がしないでもない。そう感じるのは、天井スピーカの音がPブロックではよく聴こえず、ウエンツさんのセリフがたまに聞き取れなかったせいもある。