還暦ダイアリー

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二期会公演【ワーグナー:歌劇『タンホイザー』】

ワーグナー:歌劇『タンホイザー
2024年3月3日(日) 東京文化会館

 タンホイザー:片寄純也
 エリーザベト:梶田真未
 ヴォルフラム:友清 崇
 ヴェーヌス:土屋優子

 指揮:アクセル・コーバー
 管弦楽読売日本交響楽団
 合唱:二期会合唱団
 演出:キース・ウォーナー

 

フランス国立ラン劇場と提携した本プロダクションは2021年に続く2度目の上演ですが、自分は今回が初めて。アクセル・コーバー氏によるバイロイトの音が東京文化会館に響くことを期待したものです。

席はもちろん5階席。舞台が見切れていたり床しか見えなくてもなんのその、都民芸術フェスティバル(東京都)のおかげで冬のオペラはE席2000円で観劇できます。藤原歌劇団の『ファウスト』も都合が合えば行きたかった。

尚、自分が10代後半の時に購入した1981年の二期会ドンカルロ公演も、東京都補助枠の5階席チケットは2000円でした(これ、結局行かなかった)。チケット価格が変わってないことが日本経済の停滞を物語っているようで、果たして良いのか悪いのか。

 

 

前日の投稿で苦手意識について書きましたが、あれを投稿してからもう一つ苦手があったことを思い出す。それはキース・ウォーナー氏の演出。

新国立劇場が開館してから最初のニーベルングの指環シリーズが2001年、同氏の演出のよる『ラインの黄金』から始まりました。きっと、好きな方は好きなんだと思うのですが、いわゆる『読み替え演出』です。

なので、あくまでも個人的感想ですが、何か訳の分からない奇抜なことをやればそれが指環?って感じで、文明堂CM(関東ローカルらしいですが)の子熊のラインダンスみたいなのを見せられたり、とにかく抽象的でぶっ飛んだ演出。翌年のワルキューレ以降を観る気が削がれたので以降の演出はわからず。また、新国立劇場側もあれを『トーキョー・リング』とか持ち上げてるのがイヤだった。

 

あの、パトリス・シェローの端正な演出ですら大騒動を起こした80年代の指環とは隔世の感がありましたが、今回(正確には2021年プレミエですね)、さらに20年を経たキース・ウォーナー氏の同じワーグナー作品であるタンホイザー演出はどうだったか。

先に見ていた2021年公演のキービジュアルにイヤな感じはなかったので割と安心してましたが、実際にも写実的で、全員がつっ立ったまま歌っているイメージで静の新国立劇場タンホイザーと比べれば、登場人物の感情が動きに表れている動のタンホイザー

第2幕冒頭、タンホイザーが戻ってくると分かってのエリーザベトのルンルンぶり、あまりの態度の悪さにこっちまでイラついてくるタンホイザーのヤサグレた声や動きなどを含め、明快な感情表現をつけた演出に好感。

あとは特に第2幕で多かった謎の動き、国王自ら椅子を直したり、歌合戦の聴衆がグルグルと廻っていたり、合唱団が客席に尻を向けて座るという禁忌を敢えてやっていたりと、こちらも割と面白い。謎と言えばヴェーヌスが連れていたあの子供は何だったのか・・。

 

声楽陣は第2幕から本調子かな、と感じます。お馴染み三澤洋史氏率いる二期会合唱団、そして序曲から引き込まれたアクセル・コーバーと読響はたいへん素晴らしい。サイモン・オニールの日程で聴きたかったかなと、ほんの、ほんの少しだけ考えました。

以上

 

[追記]

舞台上方で開幕からずっと釣り下がったままで、時に梯子になったりした謎のオブジェクトのオリジナルを発見しました

(上) X(Twitter)の公式写真、(下) 神奈川県某所、江の○