還暦ダイアリー

いつの間にか還暦に。されどまだ還暦、人生カウントダウン始まらず

演奏会【極上の定番定食:日本フィルハーモニー交響楽団横浜定期】

以前の投稿(下記リンク)の最後の方に、余談として日本フィルの労働争議の件を少しだけ書きました。経営が安定した現在も、自分にとっては10代の頃より日本フィルの演奏を聴きに行くことには特別な意味があります。

名匠、渡辺暁雄氏が逝去されてからは、本日の横浜公演を指揮した小林研一郎氏、通称コバケンが日本フィルの音楽的、精神的な柱となって長らく同オケを支えています。

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コバケン音楽の特徴は、炎のコバケンと称されているように、熱い演奏、あるいはコブシの効いた節回しの演奏など、聴衆を楽しませることをモットーとしています。以前はアンコールにも力を入れており、何曲も披露したり、予定されたプログラムでは使われなかったピアノを出してきてモーツァルトの協奏曲(23番だったかなー)の緩徐楽章を弾き振りしたこともありと、とにかくお客さんへのサービス精神が旺盛。ただ、近年では曲数も減ってきて、定番曲(ダニーボーイとか)一曲という日もあります。

一方、レパートリーの少なさが昔から指摘されています。幻想、チャイ5、オルガン付きをくるくる回してる感じ。以前はブルックナーファンも納得の第8番の凄演奏とか、オペラ、蝶々夫人(日本フィルではありませんでしたが)なども聴いたことはありますが、近年では披露されていません。

でも、それでいいのです。タイトルにも書きました、極上の定番定食。

定期的に食べたくなる、例えば銀だらの煮つけ定食。いつもの御膳なので構えることなく箸をつけますが、銀だらの身を一口食べると、脂がのった肉厚の身が黄金レシピのたれと絡んだ極上の旨さに感嘆、どんどん箸が進み、お酒なんかも頼んだりして気が付くと満腹で、しかもいい感じに酔っている。

 日本フィルハーモニー交響楽団 第395回横浜定期演奏会

  指揮:小林研一郎
  ヴァイオリン:神尾真由子
  オルガン:石丸由佳

  モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番『トルコ風』
  サン=サーンス交響曲第3番『オルガン付き』

 

神尾さんのモーツァルトは全身を使った熱のある演奏。アンコールの目の醒めるようなパガニーニに唸る。

コバケンのオルガン付きは何度も聴いているのですが、いつもサントリーホールで、もしかしたらみなとみらいホールで聴いたのは初めて・・くらいに記憶がありません。

何度も演奏しているレパートリー曲なので練習時間が少ないのかもしれませんが、大好きな第一楽章第二部の胸が締め付けられるような美しさ、第二楽章第二部、オルガン強奏あとのピアノ連弾パートのエスプリ感などがあれば満足。そして派手なコーダ。終わりよければすべて良し、です。

みなとみらいホールのオルガンは結構な音圧もあり、ホルンがベルアップするオーケストラの強奏も相まって、朝比奈隆氏の名著のタイトル、『楽は堂に満ちて』という言葉が浮かんできました。

またコバケンの極上定食を戴きに参上します。