還暦ダイアリー

いつの間にか還暦に。されどまだ還暦、人生カウントダウン始まらず

サントリーホールのこと【オープンハウスと1986年】

【オープンハウス】

本日(4月6日)、所要の帰りにサントリーホールが入場無料のオープンハウスを開催していることを思い出したので、溜池山王で下車して行ってきました。確か10年くらい前にも一度行ったことがあります。
自慢していいのかな?サントリーホールがオープンした1986年からずっと長い年月に渡って通ってますが、多分そのうちの95%はP席(舞台後ろの音響がアンバランスな席で最も安い)に座っています。理由は単に資金不足。一階席に座ったことなんて、オープニングシリーズで若杉弘さんの公演を聴いて以降思い出せ・・いや、もう一回あったような気がする・・くらい縁のない席。
オープンハウスでは、オルガン演奏とか横浜シンフォニエッタの演奏があるので、いろんな席を試してみるつもりでしたが、結論から先に申しますと、結局体調が悪く、演奏開始まで待てなかったこともあり早々に引き上げてしまいました。
帰り際、小ホールを覗いてみると、ミニコンサートは満員立ち見で(ただし、歌手の方の歌よりもお子様の泣き声のほうが大きい瞬間も)、ワイン・セミナーは開始待ちのお客さんが沢山、ガイドツアーも盛況なようでした。
短い滞在時間での成果としては、一番音が良いとされ皇室の方々がお座りになられる『ロイヤルシート』に座ったことでしょうか。以下の写真です。肝心の音は聴けてませんが。

写真から伝わりますかね、来場されたお子様たちが楽しそう。
クラシックの聴衆も高齢化が深刻な昨今、自分も平均年齢上げに加担しているわけですが、この子たちがいずれ客席を埋め、もしかしたらステージに立つ音楽家として育つかもしれません。オープンハウスは良い催しだと思います。来年も日程が合えば行こうかな。

【初めてのサントリーホール体験を思い出す】

1986年10月12日の落成式典ののち、ヴォルフガング・サヴァリッシュさんとNHK交響楽団の第九公演で始まったオープニングシリーズは、カラヤンベルリン・フィルカラヤンは来日できずに小澤さんが代役だった記憶)、アバドウィーンフィルベートーヴェン全曲演奏会、シノーポリ/フィルハーモニアのマーラー復活、内田光子さんのモーツァルトのピアノ協奏曲全曲演奏会、その他、その他、その他、錚々たる顔ぶれによる豪華な演奏会が翌年一月まで続きました。

その時の総合パンフレットが上記の写真。620ページ強もある豪華装丁で確か3500円くらいした。大半は演奏の案内や演奏者の紹介、インタビューなどですが、後半、120ページも使ってホールの構想から設計事務所の専門的な記事、そしてオルガン、チェンバロの製作記事まであるなど、たいへん貴重な資料が掲載されています。

そして、その中の1ページに下記の写真が掲載されています。


この写真は、サントリーホールがオープンする半年前の4月5日(奇しくも?ちょうど38年前の昨日です)、満席のお客さん(サントリーの関係者)を入れた最初の音響実験の様子。
つまり、サントリーホールで最初に客席を埋めて演奏したのはサヴァリッシュ/NHK交響楽団ではなく、その半年前に山田一雄先生とトップ・アマチュアの新交響楽団さんということになります。
作曲家の故芥川也寸志さんが設立した新交響楽団は、極めて音楽性の高い活動がサントリー音楽財団から認められて70年代にサントリー音楽賞を受賞しているほか、こけら落とし公演のトップに演奏された曲を財団が芥川也寸志さんに委嘱していた経緯もあり(推測)、翌日に東京文化会館で本番(千人の交響曲)がある新交響楽団ゲネプロを、サントリーホールの音響実験を兼ねて行うことになりました。

そして、この写真の合唱団の中に自分がいます。ゲネプロサントリーホールで行うと聞いたときは、もうビックリして新交響楽団さんに心から感謝しました。
ゲネプロ当日はワクワクしましたね。ホールに入ると、オープン半年前なのに工事中を感じさせる様子が一切ない内装の綺麗さ、そして既に制服を着たレセプショニストのお姉さま方が配置されていました。
バラバラと入場する我々を恭しく招き入れる際に、ホールを汚しちゃならないので警察の鑑識が使うような靴カバーを渡されます。ちなみにオケの管楽器の方々は、あの水が床に垂れないようにシートを使わされてました。
ホール内へ入ると、当時の他のホールでは見たことのない木のぬくもりを感じさせる豪華さに驚きます。やはり工事を感じさせるものは何もありませんでしたが、オルガンだけはまだ入っておりません。
合唱団の自席に着くと、まず誰もが手を叩いて残響を確認します。当時のコンサートホールといえばトップが東京文化会館で、あとはNHKホール、新宿厚生年金会館、日本青年館日比谷公会堂等々でしたから、それらを凌駕する圧倒的に豊かな響きであることは手を叩いただけで良く解りました。
その後、前半がゲネプロで後半が音響設計事務所による音響実験となります。ステージ上に球体状のスピーカを設置していろんな周波数が混じっていたと思われるノイズを鳴らし、残響特性等を記録しています。我々もお客さんも黙って座っているだけ。確か、低い音のノイズでは天井スピーカも鳴らしていたようです。
その日、ひとつアクシデントがあったことを思い出しました。サントリーホールの建物の上には庭園があるのですが、ゲネプロ中にコンコンコンと庭園を造成中と思われる音がホール内に響いたこと。

以上、長々とすいません。思い出語りでした。