アマプラのプラス松竹サービスの無料期間が終わってしまうので、先に投稿した『砂の器』に加えて本作を昨夜鑑賞しました。映画をじっくり見る時間が無いので2週間の無料期間では2本が精いっぱいでした。
キャスト
武田鉄矢
友里千賀子
永島敏行
森下愛子
熊谷真実
山本圭
田村高廣
渥美清、倍賞千恵子、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄、佐藤蛾次郎
スタッフ
監督、脚本:朝間義隆
原案:山田洋次
音楽
指揮:外山雄三
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
合唱:川崎エゴラド合唱団
公開時に観ています。
この数年後に自分も立川のアマチュア合唱団で歌うことになるのですが、その合唱団を指導する先生が、本作で川崎エゴラド合唱団(何年か前まで実在)を直接指導した郡司博先生であったことは偶然です。
現代の視点から観ると、実に古臭い青春映画。でも、その古臭さがいい。
登場するのは川崎の工業地帯で働く寮住まいの若い労働者たち。時代がかっています。今のドラマ、映画で作業服の若者を主役に据えることはないでしょう。川崎駅前も古くて味がある。劇中、『駅前に地下街ができる』とあるのは今のアゼリアのこと。
ストーリー。
女の子の電話番号を聞き(今風に言うとLINEの交換)お茶すること、合唱にもベートーヴェンにも興味なんか無い徳次郎(武田鉄矢)が第九に関わるきっかけとなったのはそれだけの理由。そして、若い合唱団員同士で絡まる恋愛沙汰、厳しい合唱の先生(田村高廣)との衝突、体が弱かった先輩の死などを通して、バラバラだった彼らが音楽の求心力でまとまってゆく過程を描いています。
この頃の松竹映画に武田鉄矢さんが出てくると、主役、脇役に関わらず、どんな映画でも同じ様な役回りなのですが、映画初主演作である本作からも鉄矢節が全開なのは笑えます。
だが、それがいい。某キム○○さんが、どんなドラマに出ても同じと言われてますが、何故か違うんですよね。武田さんが出てくる松竹映画にハズレはありません。
また、いわゆる清純系で感じが良いヒロインだが、実は恋愛体質な京子を演じた友里千賀子さんがまたかわいい。
あと合唱団代表役の山本圭さん。この方もどんな映画で観ても、明治時代に社会主義を声高に唱えた活動家のように見えてしまうのは自分だけ?五社英雄監督の映画『鬼龍院花子の生涯』のイメージが強すぎるせいなのか。
最後の演奏会シーンで指揮をされたのは、昨年逝去された外山雄三氏。モノラルの録音が良くなくて耳障りにも聴こえますが、力のこもった第九演奏でした。
ツッコミどころは多々ありますが、そういう野暮なことは書きません。少しでも音楽に興味やゆかりがある方は観ておいて損はないと思います。
以下余談。
この映画はあちこちのサブスクで観ることができ、比較的恵まれてます。もう一つ、観たことがない古い音楽映画を探しているのですが、こちらはサブスクに無くDVDは入手不可能と、幻になってしまいました。
映画『炎の第五楽章』(にっかつ)は、当時、文化放送から解散を申し渡され、文化庁からの助成金もカットされて自主運営を余儀なくされた日本フィルハーモニー交響楽団のリアルな争議を描いています。映画では言及されていないと思いますが、小澤征爾氏の天皇陛下直訴事件も、この日本フィルの解散に絡んでいます。
この頃、争議中でありながらも、名匠であり創設時の指揮者であった渡辺暁雄氏が日本フィルに留まり、シベリウスの交響曲全集など幾多の名演奏、名録音を残したことは特筆すべきことです。
『市民とともに歩むオーケストラ』の看板を掲げた日本フィルを聴きに行くことは、どこかに応援する気持ちがあり、公益財団法人として経営が安定した現在も、その想いは続いております。
指揮者、小林研一郎氏が『炎のコバケン』と呼ばれる所以もこの映画のタイトルにあるのでしょう、(レパートリーは増えませんが)氏の熱い演奏を聴くことが定期的な楽しみになっています。
次回のコバケン/日本フィルは今月30日の横浜公演を予定。