還暦ダイアリー

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演奏会【精力的なジョナサン・ノット/東響の小ロシア、悲愴】

2024.7.27(土)ミューザ川崎シンフォニーホール
フェスタサマーミューザ・オープニング公演
指揮:ジョナサン・ノット
管弦楽:東京交響楽団
チャイコフスキー交響曲第2番ハ短調作品17『小ロシア』(1872年初稿版)
チャイコフスキー交響曲第6番ロ短調作品74『悲愴』

ジョナサン・ノットは一昨年、本邦楽壇の話題をかっさらった、アスミク・グリゴリアンがタイトルロールの『サロメ』演奏会形式公演(サントリーホール)以来。小ロシアは初めて。悲愴は昨年のすみだトリフォニーホール、阿部加奈子さんと新日本フィルの忘れ難き鮮烈な演奏以来・・かな。

いきなり余談ですが、そろそろ新日本フィルの来シーズンの発表になります。もし阿部加奈子さんが定期公演に登壇するなら迷わず定期会員(サントリー)を継続します。というか、是非名前が載っていてほしい。切々なる願い。

・・話は戻ります。ジョナサン・ノットの精力的でエネルギッシュな指揮はクセになるので、このフェスタサマーミューザのオープニング公演を楽しみにしておりました。

まずは交響曲第2番『小ロシア』について。
チャイコフスキーが作曲した交響曲の前半3曲は、第1番の『冬の日の幻想』こそ普通に名曲だと思いますが、問題は第2番『小ロシア』と第3番『ポーランド』。
この2曲は、ずいぶん昔に聴いてつまらんと烙印を押してしまい、それ以降ほとんど聴いていません。いずれ生で聴くこともあろうから、その前に集中して聴けばよいと放置。
今日の演奏会で『小ロシア』を始めて生で聴くことになったわけですが、放置してから結構な年月を経ています。
予習、というかどんな曲か思い出すために仕事のBGMとして、テミルカーノフカラヤンオーマンディロストロポーヴィチ、そしてスヴェトラーノフを2種聴いております。興味ない割に音源はたくさん持っています。

で、よくわかりました。
チャイコフスキーの作品として聴くからつまらなく感じるんだと。

これが何故かチャイコ風味がするロシアの知られざる作曲家の作品として聴いたならば、何たる傑作!と膝を打ったことでしょう。イメージというか、先入観で聴いてはいけませんね。
一番楽しく聴けたのは、やはりスヴェトラーノフの東京ライブ・・と書きたいところですが、同じスヴェトラーノフ/ソヴィエト国立交響楽団の1967年、メロディア音源が良かった。何というか、メロディア盤におけるロシアオケのクセになる音と鳴りっぷりを久々に聴いて楽しくなってしまったので。
そんなこんなで、多少のワクワク感を携えながら聴いたノットの『小ロシア』は何と原典版でした。公演パンフによればより「クレイジー」だと感じたから採用したそうで。
原典版にしろ改訂版にしろ、どの版を使おうが、ノットが振るこの曲は名演奏になっていたでしょう。こと『小ロシア』に限って言えば、私の2024年忘れ難き演奏にエントリーです。

昨年は行ってないのですが、ノット/東響で第3番、第4番が演奏されて大変な評判となったようです。第3番の方はわかりませんが、今日の『小ロシア』を聴く限り、ノットの第4番が好評だったことは容易にイメージできます。

ところが『悲愴』・・あれ?
第一楽章は主題のフレーズを早めに回してサッと切り上げ、過度に感傷的にならないようにしている。泣きがない。それはそれで良いのですが、オケにそれはないだろう的な痛恨の瑕疵が・・。
第2楽章も第3楽章も粘ったりタメたりする表現もなく、するする進む。だいたいどのオケでも定期演奏会以外、このような名曲コンサート的な位置づけの演奏会では、悲愴の第3楽章が終わるとパラパラと拍手が起きるものですが(定期演奏会でも東フィルで割とがっつりな拍手が沸いたことも)、今日はそれがなかったので、ミューザのお客さんが優秀なのか、それとも胸に響かなかったのか・・。
今日のお客さんは、小ロシアも悲愴も指揮者が棒を降ろすまで拍手をしないのは見事でしたが、一階平土間あたりでケータイ鳴ってたし。

さて、途中まで聴いていて、これは第4楽章を頂点を絞った演奏だなと感じた通り、終楽章で燃焼度は上がったが、総じて華美な表現を抑え、楽譜に書かれた音の美しさを再現したような演奏だったのでしょう。
終楽章も耽美なまま、最後まで感傷を排した悲愴として通せばよかったように思えます。少々、終わりよければ全て良し的な演奏にも聴こえてしまったのは、自分の体調が悪かったせいですね。たまにありますが、そういう演奏は好きではありません。

 

フェスタサマーミューザは、もう一種チケットを取ってあります。沼尻さんとN響によるブラームスのピアノ四重奏曲管弦楽版(シェーンベルク編曲)。大昔、『オーケストラがやってきた』の公開収録で岩城宏之さんの演奏を聴いて以来、とても好きになった曲・・なんですが、この日は合唱団の練習と重なってしまった。合唱団の公演日が近くなければ迷わず沼尻さんを選択するのですけど。どうしよう。