この秋の神奈川フィルさんは3回目。
デニス・ラッセル・デイヴィス、滑川真希ご夫妻によるフィリップ・グラスの映画音楽『Mishima』のピアノ協奏曲版に聴き惚れ、前回の小泉和裕先生、やはり暗譜で振られたプロコフィエフに素直に感動。
そして定期演奏会も400回を迎えた記念公演には、ヴェルディの『レクイエム』が選ばれました。
第400回定期演奏会 横浜みなとみらいホール
2024年11月16日(土曜日)
ヴェルディ:『レクイエム』
ソプラノ:田崎尚美
メゾ・ソプラノ:中島郁子
テノール:宮里直樹
バス:平野和
指揮:沼尻竜典
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
合唱:神奈川ハーモニック・クワイア
沼尻さんの明晰な棒と、オペラティックなソリストの歌唱、そして何より、プロ歌手60人による音圧があるのに混濁しない、最弱音から最強音まで自在なダイナミックレンジを有した合唱による、心揺さぶるレクイエムでした。
この曲は、ともするとディエス・イレばかりがもてはやされますが、やはり最後に総集編として置かれたリ・ベラメの出来が全てでしょう。
この演奏では、特にソプラノの田崎さんと合唱とが無伴奏で歌う、中間の『Requiem aeternam...』が美しかった。そして最後、プロ合唱の音圧を突き抜ける田崎さんの絶唱『Li-be-ra me』で脳内物質が大量に分泌。
今回の演奏は、特に典礼文の歌詞を熟読しながら聴いてました。
その途中で気がついたことがあります。信者の方々からすれば当たり前だろ、何を言ってるんだお前は、と怒られそうですが。
レクイエムに限らずミサ曲関連に共通してるのでしょう、ディエス・イレやサンクトゥスなどを別にすれば、ほぼ神様へのお願いで構成されている。
『私をお救いください』『その日に私を滅ぼさないでください』『どうか永遠の業火にくべないでください』『彼らに休息を授けてください』『絶えることのない光で彼らを照らしてください』などなど・・・。
来年、このヴェルディのレクイエムをアマチュア合唱団で歌います。その際には、ひざまずき、祈りを捧げ、許しを請い、救ってくださいと敬虔にお願いする気持ちで歌えばよいのでしょうか。
それは正しいような気がしますが、そうではない気もする。
もしかしたら、ですが、神様がお願いを聴いてくださるためには、やはり無償というわけにはいかない。そのためには人々の厚い信仰心が必要なのではないかと考えます。
だから合唱で歌う際には、歌詞に沿って私をお救いくださいと敬虔に祈るよりも、練習を含む演奏時間の間だけでも、真摯な信仰心を抱くことが必要なのかもしれません。
・・でも、信仰心を抱くって、具体的にはどうすればいいいのだろう。課題です。
さて、終演後には第400回を記念した定期会員向けの交流会がありました。自分もセレクト会員という、ギリの参加資格があるので参加させていただきました。沼尻先生のサインをいただく等、充実した時間でした。
が、気になることがひとつ。
皆さま、今回のプロ合唱(神奈川ハーモニック・クワイア)をプロだから良かったと褒めすぎ。バッサリと切り捨てたように見える、20年連れ添ったアマチュアの神奈川フィル合唱団(実は聴いたことがありません)の立場が・・。
自分も上の方で今回の合唱団をベタ褒めしてますが、いろんな声が混濁したアマチュア合唱による熱い演奏も嫌いではありません。もちろん、曲の本質を理解して熱いだけではない、立派な音楽を聴かせる合唱団はたくさんあると思います。
ですが、アマチュア推しを強弁はしません。いつも、金を払っているんだから完璧な音楽を聴かせるべきだというド正論の前に反論ができないので。
以上
おわり