本日のお仕事BGMです。
アムランのCDが発売された2000年代の半ばあたりでしょうか、ロシアの現代音楽作曲家、ニコライ・カプースチンの人気に火がついたのは。この頃に作曲家が残した一連の自作自演盤も再販になったようですが、特にピアノ音楽ファンでもなかった自分は全く興味ありませんでした。
その後、日本ではもう一段、カプースチン人気の急加速があります。
辻井伸行君が『8つの演奏会用練習曲』の前奏曲をアンコールピースとして各地で取り上げる中、全曲を収めたCDが発売になりました(2022年?)。このタイミングで、テレ朝の題名のない音楽会で、まるまる辻井/カプースチン特集が組まれたりと人気に拍車をかけたようです。
この人気が本物であることは、コアなクラシックファンしか買い求めないNAXOSレーベルの同曲異演CD(カテリーネ・ゴルデラーゼ演奏)のアマゾン販売ペ-ジには、NAXOSとは思えない沢山のコメントが書かれていることからもうかがい知れます。
それでも現在に至るまで、依然カプースチン音楽に興味が無い自分ですが、音源だけは集めていてアーカイブに収まっています。
本日はお仕事用のBGMとして、カプースチンの最も有名な曲集『8つの演奏会用練習曲』を3つの演奏で聴いております。
カプースチン:8つの演奏会用練習曲作品40
ニコライ・カプースチン(P)(1985)
マルク=アンドレ・アムラン(P)(2003)
この作曲家の音楽の特徴はクラシックとジャズの融合ということですが、ロシアにてジャズ・ミュージシャンでもあったカプースチンの感性は確かだと思われます。サロン音楽風なのもあり、聴き入ってしまいます。人気があるのも納得。
でも、いくら即興性から産まれた音楽でも、楽譜に記譜した時点でジャジーではありますがジャズではありませんね。ここは間違ってはいけないところ。
作曲家の自作自演盤では、当然ご自分の指が紡いだ即興音楽を記譜したものだけに納得の演奏ではありますが、辻井君のは盲目のピアニストが弾いているという驚異を差し引いたとしても、実に高い音楽性に支えられているように聴こえます。
余談です。カプースチン以外にも圧巻のラ・カンパネラなどを奏していた、音楽の流行まで左右する辻井伸行君のアンコールですが、昨年4月の新日本フィルハーモニー交響楽団の定期公演で佐渡裕さんとのラフマニノフ2番の後に演奏された曲は、ラ・カンパネラでもカプースチンでもなく知らない曲でした。
でも、冒頭の和音からのフレーズに全て聴き覚えが・・なんだっけ、なんだっけと一生懸命思い出すと、それはワーグナーのローエングリンからの一節でした。後で確認しましたが、正確にはワーグナー(リスト編)、ローエングリンから『エルザの大聖堂への行列』。
ラ・カンパネラやカプースチンを弾くように派手に技巧を誇示するのではなく、ローエングリンの叙情性を聴かせた美しい演奏だったように記憶しています。尚、この曲は流行ってません。